第9回とちぎアントレ体験取材

 最終選考会にのぞんだ学生たちの「エントリーのきっかけや「アイデアの着想などを、自らもファイナリストである木学生親文社 代表 小倉彩心さん(宇都宮女子高2年)が取材してくれました。 


 高校生から大学生まで参加していた今回のアントレプレナーコンテスト(以下アントレ)プロの新聞記者の方の書いた文章で紹介される参加者は、凛々しく、遠い存在に感じられる。

 我々最終選考の参加者は、幾度かの選考を通ってきた。そのため、行動力と発想力の面において、誇れるところがあるのかもしれない。等身大の私が書いた文は、もしかすると、幾分か印象を変える働きを成すかもしれない。それを期待して、筆を取る。

 私が応募したきっかけは、自分の部活のことである。私の学校では、部活の種類が豊富である。そのせいか、新聞部、文芸部等々のあまり目立たない文化部は、年中無休で部員募集をする程、部員集めに困窮している。認知度もそれほど高くないのかもしれない。人数が集まらない部活の何が問題かというと、活動が大幅に縮小されることだ。それを少しでも解消するビジネスプランを作った。こうして声を上げることで宣伝にならないかな……なんて、若干、期待も込めながら。

 そして、ご縁でこうして筆を執らせて頂いているのだから、感謝は尽きない。私がアントレを通して学んだのは、人の縁の大切さである。先の国体でも掲げられていた『一期一会』。これが、基本でそのおかげで様々なことが成り立つのだということである。

 プレゼンの為のアンケートに協力してくれたのは、同級生に友人、同じ学校の生徒、これまで何かで関わりを持った人々。廃部寸前とも言う新聞部で共に奮闘してきた仲間達。新聞の作り方を教えて下さった先輩方。今までの人生で出逢ったその方々の力が無ければ、こうしてこんな文章を書いていないのだと思うと感慨深い。そして、その全ての方々への感謝の気持ちが溢れてくる。

 そして、アントレでも多くの素敵な方との出逢いがあった。その中の取材に協力して下さった幾人かをご紹介したいと思う。

◉記事執筆:栃木学生親文社 代表 小倉彩心(宇都宮女子高校2年)

【奨励賞】

栃木イノベーション賞(提供:下野新聞社)

 

株式会社 Deerさん

 

 最優秀賞を受賞された、Deerの皆さん。試供品を作っていたり、現状をよく説明していたり、本当に納得のいく最優秀賞だった。準備の徹底というのは、ここまで穴のないことなのだ、ととても勉強になった。そんなDeerの中には、二年前の苦渋から毎年応募している方がいた。

 応募のきっかけは、起業する為に1番の近道になると思ったことだそう。楽しかったし、色んな人のアイデアが聞けてまたアイデアが膨らんだと語っていた。

 アントレの最終選考では、どの団体も自分のプランを精錬していて、思考の面で大変勉強になる。発想は十人十色で、意外な視点から物事を捉えている。日常の中に潜む種を、生活の深みを、有難さをも感じることができた。

 全力でプレゼンを作ったことが良かったことだという。細かいデータや、実際の声、展開について等々。実現に向けた説得力のあるプレゼンは、本当に力強かった。『全力で』というフレーズからも、それが伝わるのではないだろうか。

 今回のアイデアは、代表の祖父が猟友会に属していて、その中で鹿を食べずに廃棄する点が勿体ないと思っていたことから湧いたのだそう。

 猟師の仕事は、元々あまり馴染みのない仕事、分野。しかし、それでありながら、沢山の鹿を無駄にしてしまうという食品ロスに絡んだホットな話題。知らない世界の話だと思っていた話がグッと身近になった気がした。きっと、そんなことが普段の暮らしの中にも潜んでいるに違いないと気付かされた刹那であった。

◉株式会社 Deer 代表  岡田 直樹(作新学院大学 1年)

グル−プメンバ−: 安野 巧真(同 3年)

岡田 拓樹(屋久島おおぞら高校 2年)

【最優秀賞】

リバネス賞(提供/ (株)リバネス)

悟空のきもち賞(提供/ (株)悟空のきもちTHE LABO)

すまスマ賞(提供/ 住まいるネットワーク(株))

 

株式会社自転車タクシー 小森純さん

 

 小学生の頃から、起業する事が夢で、起業について実際にどんなことをするのかを学ぶために応募したそう。着想は、普段の生活で不便なことから得たと言う。

 一昨年の動画を見て事業計画の細かさに焦ったそう。しかし、一観客として見た、彼女のプレゼンは、思考を細かいところまで徹底されていたようにも思われた。

 雨の日の自転車の運搬を改善するビジネスプラン。自転車を使用している私には、身近に感じる案だった。

 何気ない実生活。その中に溢れる、こうあればいいのになということは誰にでもあるのではないか。だが、それを基盤として発想を深めた案は、中々出てこない。そこが彼女の尊敬できる部分だと思う。

 代行サービスを利用すれば実現できるのではないか、という声を取材の中で、他の最終選考者から耳にした。実現すると、きっと暮らしに大きく役立つだろうアイデアに、感服したのはきっと、私だけではない筈だ。

 活躍する経営者の方々にいただいたアドバイスで、自分の考えを多角的に見ることができて、勉強になったそうだ。

 アントレには、自分の思いつかなかった点や、盲目点を経営者の方々に直接アドバイスしていただける機会がある。起業に必要な顧客層、市場等の専門家ならではの目線は、厳しくもあり、とても勉強になる。

 最後にアントレで良かったことについてでは、「コロナ禍で満足のいく行動や挑戦が出来ない中で、自分の夢を現実へと一歩近づける機会を得られたこと」と回答していただいた。コロナ禍でありながらも、このように貴重な経験をさせて頂いたことは、彼女や私を含む参加者の今後の大きな財産となることは間違い無いだろう。

◉株式会社 自転車タクシー 代表  小森 純(烏山高校 3年)

【奨励賞】

エンターテイン賞(提供/ (株)エンターテイン)

 

株式会社Herz 樋口雅人さん

 

 参加のきっかけは、学校の課題だったからだそう。学校の先生に、栃木県を盛り上げるために、自分の会社を作るプロジェクトと言われていたという。

 将来自分で会社を立ち上げたいと思っているそうで、その第1歩として参考になったという。

 そんな彼のプレゼンはユーモアに溢れていて、引き込まれるようだった。

 プレゼンというのは、ただ相手に一方的にこちらの提示したい情報を押し付けるのでは上手くいかない。相手にいかに寄り添って、且つ自分の伝えたいことを分かりやすく伝えられるか、が勝負になる。

 私達は、AIの活躍するであろう社会で活躍しなくてはならない。そういったプレゼンを上手くする力というのは、その中で生き抜く力になるのではないか。

 ただ、その能力というのは、机に向かって手を動かしているだけでは身につかない。挑戦の積み重ねでしか、身につかないのだ。

 台本を用意せずに本番を迎えたと言っていたのに、面白くて惹き込まれるプレゼンをやってのけた彼を尊敬する。

 会社づくりは、自分が思っていたよりも、難しく、大変だったと気がついたそうだ。

 アントレでは、起業資金となる百万円を実際にどう運用するのかを考えたり、スライドを作成したりする。顧客層、市場の設定、そこに向けたサービスの在り方を理解する。会社はこうやってできていくのか、と学ぶことができる。実際の想像より、身近で、でも考えることが多くて少し難しい。それを考えられる機会というのは、中々ない。そんな貴重な機会を得られるのだ。

 自分の夢を語った彼の声には、曇りが無かった。きっと彼は、これからの人生で、この貴重な経験から学んだことを活かして羽ばたくのだと私は思った。

◉株式会社 Herz 代表  樋口 雅人(宇都宮白楊高校 2年)

 【審査員特別賞】

 PRiDE賞(提供/ (株)プライド)

 

株式会社 のび塾 高野琉衣さん

 

 iP-U(宇都宮大学のGSC)でアントレを見かけ、本気で考えたアイデアを発信し合う場だと感じて、直感的に「やりたい」と思ったのだそう。

 彼女は最終選考に残ったメンバーの中で最年少。大学生も多い中、緊張している、と語ってはいたものの、すごく覇気のある姿でプレゼンをしていて、圧倒された。謙遜をこそするものの、彼女の姿からは、何処か自信を認められていた気がする。きっと事前によく準備をしていたのだと思う。

 ビジネスプランを考える上で紆余曲折があったそうだが、「楽しかった」と感じられるような実りある経験になったのだそう。幼少期の自身の経験や、教育やその費用の現状、家庭内での会話から着想を得たのだそう。

 教育をテーマにした彼女のビジネスプラン。学生の私たちにとっては、身近なもので、大人よりもその年代に近いという利点がある。自分の今と過去を振り返って、情勢を見て……。そんな機会は、アントレのような場でもないと自らはそうそう出来ない。

 私自身、実は彼女と同じiP-Uに身を置いていたこともあって勝手に親近感を抱いていた。私は、自分の一歳下ながら、チャンスの場を生かし、自らの成長に繋げた彼女を尊敬する。それと同時に、そういう刺激を与えてくれたこのアントレの有り難みに浸っているのである。

◉株式会社 のび塾 代表  高野 琉衣(横浜サイエンスフロンティア高校 1年)

 【優秀賞】 

モンキークルージャパン賞(提供/ (株)モンキークルージャパン)

 


記事執筆の小倉さん、取材に協力していただいた学生のみなさん、ありがとうございました。